「宝物」

幸せってなんだろう

愛ってなんだろう

失くした時きっと気づくことね

ほんの小さなものがどんなに大切なものなのか

誰も・・・

泣きくれてひとり夜を明かすこともあったのに

人は忘れてしまう

だから生きてゆけるのかもしれないけれど

「私」がどんなに大切なのかは決して知ることは無い

失くした時にはそれに気づく「私」はもういないのだから

誰も・・・

「私」を本当に知ることが出来ない

それが理由なのかも

だから毎日がありふれたものだと思えるのかも

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「還暦を迎えて」

還暦を迎えて思うことがある。
人間はなぜ変わらないのか、なぜ変われないのか。
「われ想う」
人間はどういう存在なのだろう。
人間とは欲望のことではないだろうか。
人間だけが欲望の拡大を正当化し主張する。
あたかも真理であるかのように。
言葉で論理を展開し、都合の好い理屈を並べ立てる。
人間は自己の存在だけは決して否定はしない。
欲深さを隠すために真、善、美、聖、徳、仁などを準備し、賢者を気どる。
それは人間の邪悪性を示しはしないだろうか。
人間とは生まれながらに罪深い存在なのだろう。
決して救われることの無い終わり無き悲劇の主人公。
人間が言葉を持ったということは、自然界からの逸脱であった。
人間は概念の世界、意味や価値の世界を構築しなければ存在できなかった。
思想、哲学を持ったということです。
考えること、何を?
自分について、世界について、真、善、美(神)について、考えることでしょう。
社会という客観的世界像を観念として創造することに伴って人間は生まれた。
社会という共同幻想を共有することではじめて人間は存在する。
人間は客観的世界の内に有限の個体として縛り付けられ、孤立させられる。
自我の芽生えと共に「私」は有限の終わりである「死」を恐れ、不安に襲われる。
しかし、すべては観念の世界、言葉による幻想世界に過ぎない。
「私」すら言葉の網の目に浮かんだイメージに過ぎない。
我々は未だに近代を超越出来てはいない。
「われ想う、ゆえにわれ在り」
神の存在を信じている宗教家も、本当は己自身の存在を信じているだけなのだ。
自分の存在を否定すれば、すべては消え去り、意味も無くなってしまうのだから。
人間が人間である限り何も変わらない永遠に。
ただ、この一瞬に希望という夢を見ることが許されているだけなのだ。

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「覇王別姫」

騅ゆかず時不利を諭す

嗚呼、天下定まりぬ

現世一瞬の夢幻

吾人生に悔いなしと言えど

汝別離は己失うほど哀しい

虞や虞や汝如何せん

四面楚歌に咲く一輪の花

誰か讃えん虞美人と

吾虞姫は久遠実成也や

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「YELL」・・・(いきものがかり)

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「色即是空」

 それは遠い過去それとも遠い未来か?
 真理の大爆発起こり
 その光により現われたものは存在の本質
 巨大な衝撃波がドップラー現象のスクリーンに映し出した影
 それこそ現世という感覚的世界
 影なのよ! 影なんだわ!

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「怨」

 晩秋の夕暮れよ! 
 もう私を連れ去るのですか?
 見えない飛翔が音を立て
 しきりに急き立てる
 空蝉は棺に納められ
 永遠の中に埋められ
 建られた十字架にぬかづいて
 愛した人がひとり呟く
 「受難の恋人よ、静かに眠れ!」 
 傷ついた魂は血と闇の中に
 泣きながら沈んでゆく
 声無き叫びを上げながら

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「二人の約束」

北の湖にあなたは一人消えた
私も忘れてないわ
「満月の夜湖に小舟を浮かべて眠りたい」
二人の夢 青春の約束
だからあなたは
伝説の湖に身を投げたの?
怨んだりしない
悔やんだりしない
あの誓いも約束も真実だもの
必ずあなたに逢いに行くわ
私が緑の水にキスしたら
優しく迎えてくれるわね
満月の下
ふたり抱き合い逝きたいの
この世での二人の約束だもの

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「夢の通い路」

怨んだりしない
憎んだり出来ない
わたしの涙を拭いてくれた人だから

嘘でもかまわない
疑ったり出来ない
わたしの肩を抱いてくれた人だから

殺されたって後悔しないわ
あなたと愛しあったあの一瞬だけは
ほんとうだから
わたしにとって真実だから

たとえあなたが忘れようとも
わたしには忘れることなんて出来ない
あなたに出逢ったことで
わたしの現世は・・・報われたのよ

夜明けを告げる小鳥たちの囀りに

去ってゆくあなたの夢から目覚める時

果てしない悲しみがまた甦る

千年もこの涙を流したら

この恋を忘れられるかしら

この夢の通い路を

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「異境に黄昏て」

インディアン・サマーの黄昏は暗く冷え込んで

異境の空もすでに秋の夕焼け

遠くに見えた家も揺らめく灯りだけ

高台から見下ろすロス・アンジェラス川

仄白く陽炎が揺れるその淡い光は

シェラ・ネヴァダ渓谷からの御使いという

あなたを想い涙する

もしもあなたからの便りだったなら

この胸の愁いもみんな慰められるのに

「強く抱きしめてほしい。とても冷たいよ」

茜空をエメラルド色の星が流れ行く

未練を抱いて「涙の谷」を越えて行く

ひとりぼっちで

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「心の痛み」

茜の空にふるえる夕陽が沈む晩秋の海

命を捨てに来たわたしは出逢ってしまった

大人びたとてもやさしいあなたに

わたしの話す失恋話がいつしか涙で途切れてしまう

「命をかけた恋だから・・・」

寄せては返す波の音だけの静かな砂浜

あなたはただ黙ってわたしの横にいてくれた

あなたはただ一緒に夕陽を見つめていてくれた

人を信じられなくなっていたわたしだけれど

あなたなら・・・あなたなら信じられた

そして時間は流れ季節はめぐる

人の心も変わるだろうか私の心も・・・

あなたのいたわりが深くなればなるほど

わたしはとても悲しく不安になってしまう

手首の傷はもう癒えたのに心の痛みは・・・

気がつけば手首をじっと見つめるわたしがいるの

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「めぐり合う者達よ!」

誰もがあなたは死んだと言います

もし

あなたが死んでいるとしたら私も死んだのです

誰にもわからない

私がこうしてあなたに寄り添っていることを

そして

あなたが優しく口づけしてくれることも

永遠にめぐり合う者達よ!

愛を思い出にしてはならない

出逢うべくして出逢い愛すべくして愛した二人には

別れということはありはしない

あなたがあなたで私が私という意味を

決して忘れない

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「恋の闇路」

あなたを見たのは緑の風吹く初夏の頃

キャンパスを駆け抜けた光でした

私の目を一瞬にくらました恋の緑陰

私の心を一瞬にさらっていった薫風

憧れが羨望に変わり嫉妬となる

輝く若さの微笑がどこか苦しそうに見えたのは

私だけ?

この闇の深さは誰にもわからない

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「幻の丘」

私は丘に駆け上がる

夕日にさよなら云いたくて

だけど待ってはくれなかった

風は見向きもせず通り過ぎ

枯葉も足早に遠ざかる

眼下に広がる家々のともし火が

なおさらこの身には冷たい

仕方のないこと人間に生まれた宿命だから

別れはいずれ誰にも遣って来る運命だから

過ぎ去った者達が教えてくれたこと

それは出逢えた時のときめき

それは許しあえた心の喜び

それは愛という祝福

私は涙も拭かず立ち続ける

夜空には無限の星々とたった一つの満月

星は次々と流れて地上に降って

月は青白い野山の上で冷たく笑う

流れ星は雪に変り降り積もり

月の笑みは白く凍りつく

月光に映る私の影が聖母の影となり

幻の丘を流れ行く

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「初恋の形見」

あなたが去ったその時

わたしの初恋は死にました

たった一人で哀れな亡骸を棺に納め

一輪の花を供えて弔ってあげました

胸の奥から込み上げる悲しみが

一粒の涙になってこぼれ落ち

それは初恋の形見です

わたしが跪き祈りを捧げると

遺愛歌が何処からともなく聴こえ

その美しさに気づかせてくれました

慈愛の深さを感じさせてくれました

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「純愛・・・サラン」

目を閉じてもわたしには見える

何時だろうと何処だろうと

百年たっても千年たっても

愛は終わらない

訳もなく涙が溢れて抑えられないわたし

この想いが心を傷つけるとしても止められない

この痛みがいつか報われると信じているから

生きて生きて・・・そして死にゆくその時に

きっと抱きしめられる

それだけでいいのよ

天よ! わたしの純愛を永遠に見守りください

わたしは愛を信じます

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「Tears in a dream」

どうして苦しめるの 愛してる 愛してる

こんなにも悲しんでるのに

どうして答えてくれないの 会いたい 会いたい

こんなにも呼んでいるのに

今でも夢に見るの 幸せだったあの頃を

何も怖くなかったあの頃 あなたが居てくれたから

でも今はもうあなたが見えない 見つけられない

「愛してる 愛してる 愛してる 愛してる」

声が虚しく木霊する

「会いたいの 会いたいの 会いたいの 会いたいの」

泣いても泣いても涸れることのない涙

「いつも君の側に居るから」 

そう言ったのに 嘘つき!

どうしよう また涙が溢れちゃう 

「心からあなたを愛しています」

その言葉がこんなにも虚しく淋しい

もう言わないわ 何も言わないから

会いに来て 会いに来て 夢でいいから会いに来て

わたしを抱いてください わたしを憐れとおもうなら

ただそれだけで全て終わらせたいの

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「愛はかげろう」

光る道は遠いかなたに陽炎ゆらす 
愛しさを捨てることなど出来ない私
夢を追うことは誰にも出来ると信じてた
強さで守った笑顔を引きずって
けれど
愛したあなたはもういない

重ねゆく愛をこの身にまといながら
情熱を醒めた唇で隠せない私
滲むほど遠く知る人も無い世界を夢見てる
子供のようにあどけない眼差しの温もり
きっと
あなたに逢えると信じてる

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「終末」

紺碧の空に超新星が爆発し

真っ赤な旭日は地に落ちる

黒雲湧き起こり真夏に雪が降り

やがて黒い雨に変わるだろう

草木は枯れ花は萎れ春はもう来ない

政治家は徽章を外し安堵する

有識者は隠れて口を噤ぎ科学者は目を覚ます

扇動者は天を指差し衆愚は銀行に奔る

動物たちは開放を喜び

鴉は笑い鳩はもう空を飛ばない

此処に至っても虚栄と傲慢と利己心は消えず

己を省みようとしない

見えぬ聞えぬ触れられぬ語られなかったものに

気がつきはしないだろう

わたしもきっと見知らぬ誰かに踏みつけられて

道端に死体を晒しているだろう

それは明日かもしれない

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「Yesterday Once More」

ある霜月の夜明け前 
遠く水鳥の鳴き声に目を覚ます
薄暗い靄の中から現われた一羽の浮き寝鳥
その見慣れた黒い瞳に涙が滲む
冬の湖面を裸足で渡る友の姿に
何故か私は声もかけられず
ただ黙って見送っていた

明くる年の息も凍る夜
遠く北の湖に小舟を浮かべてた
月冴えわたる天上から現われた大天使
その見覚えある黒い瞳に魅せられて
真冬の空へ漕ぎ出すわたしの胸に
どうしても思いだされるのは
友と結んだ一つの約束

「満月の夜 湖に小舟を浮かべて眠りたい」
青春の夢 二人の約束
忘れてないはずよ あなたも私も
だからあなたは伝説の湖に身を投げたのね
怨んだりしない悔やんだりしない
あの日の愛も約束も真実だもの

必ずあなたに逢いに行くわ
私が緑の水にキスしたら優しく迎えてね
あなたの胸でおもいっきり泣いてあげるから
「北の湖で満月の下ふたり抱き合い逝きたいの」
この世での二人の約束だから

その湖に友を訪ねて来た
必ずここに居る筈だから
枯れ木の陰に立つと
周りの雪景色はいっそう白く目も眩む
目を閉じれば瞼を通してあの頃が見えた

「ねえ 私達死ぬときは一緒よ 約束だから」
セーラー服姿の友が現れはにかみながら二人は向かい合う
「約束を守れなくて ごめんね!」
少しうつむき目線を湖面に向ける友
「いいのよ 私が約束を守って上げるから 謝らないで」
「この場所だけは変わらないわね」

私には分かること 親友だから
連絡したかったこと 相談したかったこと
苦しんだ思いも淋しかった気持ちも
決して誰にもどうしようもないことがある

「誰にも言わないでね 秘密だよ!」
「ええ わかってる あなた綺麗になったね」
「だって女学生の頃の私だもの」
「幸せなのね」
「一番幸せで輝いていた頃の自分になれるのここでは」
「今度は待つのよ 私を置いてきぼりにしたら承知しないから」
「分かってる約束するわ」

二人は目に浮かぶ涙も拭かず笑い合った
いつの間にか私もセーラー服姿の女学生
時間は私たちだけを残し流れ去ってしまった
さっきまで純白の雪の上に流れていた私の影も
今はもう見えない

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「The sound of silence」 

暗闇よ、旧き友よ、また語らいに来てしまった

影は静かに忍び入り夢の中に種を残したから

心に植わったその影は今も私を離さない

沈黙という音の中で

安らぎのない夢に彷徨うその砂利道は狭い

街灯の滲む光の下で寒さと湿気に襟を立て

ネオンの閃光に射抜かれる時夜が裂ける

そして沈黙の音に触れる

露わな光の中に見たものは幾千万の群衆

人々は声なく語り耳を傾けることなく聞き

声も唱われることもない歌を書く

そして誰もが決して沈黙という音を破らない

私は言う

「愚かな。みんな知らないのだ。沈黙が癌の様に蝕む」

「私の言葉を聞きなさい。差延べる私の手を取なさい」と

しかし言葉は静かに降る雨のように

沈黙の井戸の中で木霊する

そして人々はひれ伏し祈る彼らの作ったネオンの神に

かたどられた文字列を警句としてネオンサインがきらめく

「予言者の言葉は地下鉄の壁にも安アパートの玄関にも書かれている」と

沈黙の音の中で静かにそう告げる

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「思い出してくれますか?」

忘れようとしても忘れられないあなた

覚えていますか?

悲しいほど美しくはかなかったあの恋

私はいつもあなたを想っているわ

あなたに届くように花びらに匂い添えます

穏やかな春の日そよ風に花びらが舞ったら

あなたを忘れられず彷徨う私を思い出してくれますか?

私はいつもあなたを想っているわ

あなたに届くように涙で空に詩を綴ります

青い夏空に雨が突然降ったなら

あなたに会いたくて泣いてる私を思い出してくれますか?

私はいつもあなたを想っているわ

あなたに届くように北風に想いを託します

冬の夕暮れ粉雪があなたの頬を打ったなら

あなたを想って淋しさに凍えてる私を思い出してくれますか?

ねえーあなた

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「君の名を呼ぶ」

わたしは丘の上にいました。

「これから何かいいことあるのかなあ」

あなたは答えない。

「あの頃に戻りたいわね、そう思わない?」

あなたは答えない。

「いつもわたしを負ぶってこの丘に上ったわね」

あなたはやはり答えない。

「そして、わたしはオッパの妹になった」

あなたは両手を頭の下に目を閉じたまま横たわる。

「オッパとの出逢いが初めであり終わりになったわ」

あなたが寝返りを打ったように感じた。

「人はどうして生まれるの?わたしがどうして生まれたかわかる?」

あなたは間違いなく聴いていた。

「オッパ、何か言って!」

あなたは何か言おうとした 。

「オッパ、オッパ、オッパ、愛しているわ」

あなたの名を呼んでいた。

「僕は世界を愛したい、さようなら」

あなたは見えない十字架を背負って歩んでいた。

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「宵の明星」

日の落ちた夕刻 

宵の明星が西空に瞬いていた

わたしはひとり丘に立ち

目を閉じて待っていた

涼風が衣を揺らし

衣を通して白い白い肌が浮かび上がる

その時触れる者があった

わたしにはわかっていた

この身が覚えている

あなたに違いない

手の届かぬわたしには拒むことも出来ず

ただ祈り身を任すしかなかった

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「冬の蛍火」

垂り雪の音に私は目を覚ます。
心のざわめきが誘い家を出る。
月も星もない闇は凍りついていた。
歩き出すと根雪が軋む音。
いつかその音は人の声になった。
「オッパ! お母ちゃんに会いに行こぅ」
二つの影が川縁に立っていた。
人形を負ったおかっぱ頭の少女。
学生帽をかぶった少年の私。
妹が微笑みかける。
「お腹空いたね」
兄はそれを哀れむように見つめる。
妹が手にしたドロップ缶の蓋を開ける。
夥しい白銀の素粒子が溢れ出し乱舞する。
その輝きに私は立ち尽くす。
光彩を白くぼかし広がったと思った時、
二つの影を飲み込んで連れ去った。
辺りは白闇と静寂だけになり、
やがてせせらぎの音が近くに甦る。
月が天上に浮かんでいた。
踏み出した足が何かを蹴った。
それは蓋を失くした錆び付いたドロップ缶。
川面に二匹の蛍が戯れ飛んでいた。
妹は私に負われて無邪気に唄ってる。
「ほう ほう ほうたる来~ィ♪」
「オッパ! 蛍はなんで直ぐに死んじゃうん?」
「お母ちゃんに会いたいなぁ~」
「オッパ! 何処にも行かないで」
「ほう ほう ほうたる来~ィ♪」
「オッパ! 私、眠ってもいい」
妹の声が月光に浮かんだ川向こうに渡って逝く。
それを追うかのように一つの蛍火だけが闇に消えた。
「もう、ゆっくりおやすみ」
一人残された蛍火の瞬きの様に、
私の声が悲しく水面に響き渡る。

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「花筏」

叶わぬ恋とわかっていても

女のわたしには

あきらめることなど出来はしない

春の嵐に散った桜が川面に漂えば

そこにはきっと

悲しい恋の亡骸が横たわっているはずよ

「わたしのオフィーリアよ! 貴女は何処へ流れて行くの?」

咲けば散るのが運命の桜花

実らぬ運命の恋の花筏

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「千年恋歌」

 いたずらに時は過ぎ

 叶えられない望みに

 疲れた息遣いで迷う時

 ひと時降って来た雨が

 この世の悲しみを慰める

 千年の愛を集めれば

 心のすべてが変わるだろうか

 月も眠るあの空の果てに

 今日も彷徨い歩くだろう

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「月にて」

ここからは
いつでも満天の星が見られます

皆が言うんです
「ふるさとへ帰れ」と
「あの名も知れぬ小さな青い星へ帰れ」と 

私は帰りたいの 
でも もう飛ぶ力が無いの 

お願いです 
天上に輝く琴座よ 
宇宙の詩よ 私のために鳴り響け!

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「今を生きながら」

過ぎ去ったものに囚われてしまう

今だけが真実なのに

過去に縛られれば悔恨を生むわ

抑圧による記憶だから

記憶なんてそんなに確かでもないのに

真実とは言えないのに

だから

今の私には屈辱がもたらされる

それも当てにもならない記憶によって

明日など何処にもありはしないのに

希望なしでは生きられないと人は言う

みんな今を生きながら

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「心の財宝」

長老が賢いとは限らず資産家が幸せとは限らない。
若い者の過ちは人生の糧になるが年寄りの過ちは豚も食べない。
貧乏人の過ちは同情する事もあるが金持ちの過ちは呆れる事ばかり。
ある伝説に言う。
遠く東海の何処かに財宝に溢れた島があったという。
島には繁栄した国があったが人々は財宝を貯め込むことに夢中で
愚かにも子供を生み育てることを忘れていたらしい。
年老いてもう死ぬという時になってようやく気がついた。
「貯め込んだ財宝をどうしようか?」
哀れにも既に手遅れだった。
そして莫大な財宝だけが虚しく残ったという。
今では其処に人影はなくただ緑の森が繁茂している。
どうして「心の財宝」に気づかなかったのだろう。
持ち運びに便利でどんなに使っても尽きることがないことくらい、
今では子供でも知っていることなのに。
イエスは言われた。
貧しい人々は幸いである。慰めと愛を知ることができるから。
全財産を人に施しても愛がなければ一切は無益である。
この世のものは全て主からの預かりもので、
いずれは主にお返ししなければならないもの。
「慰め」と「愛」はまぎれもなくあなたのものである。
それもどんなに施そうとも尽きることがないものである。

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「東尋坊」

 空は厚い雲に覆われてまるで終末の様

 見上げると海に突き出た断崖にふたつの影

 吹き付ける冷たい風に身をさらし

 必死に何か心の痛みに堪えている

 男と女

 たった一歩踏み出せばすべては終わるのに

 何かが男の意志を捕まえて放さない

 「私を独りにしないで! お願い!」

 女は必死に呼び止める 

 男は応えない振り向かない

 女が駆け寄り男の背中に抱きついた

 男は微動だせずそのまま立ち尽くす

 時間は止まり世界は暗闇につつまれ

 波の砕ける音だけが夢幻に響いていた

 二人は互いの心をわかり合えたのだろうか

 やがて東雲が訪れ海鳥の鳴き声がした

 見上げた断崖に人影はもう見えない

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「月夜飛翔」

 この世を生きるにはあまりにも多くのものを
 十字架の下に晒さなければならなかった私
 心の奥から命のかけらがとめどもなく溢れ
 飛散したものはもう永遠に還らない
 残ったものは乾ききった空蝉にすぎず
 ときどき背中の裂け目から残響が漏れ
 響きは何処か私を淋しく悲しくする
 無意識に血の海を渡り振り返ることもない
 この哀しみを誰も理解することはないだろう

 秋の夕風が流れ枯葉一枚肩を滑り落ち
 黄昏の向こうの丘に立つは聖女の霊か
 茜空がやがてただ一点の光に凝縮し
 その重みに耐え切れず零れ落ちる時
 丘の教会は夕影に沈み灯火が揺れる
 遠く連山は登ったばかりの月光を浴び
 その山稜に青白い幻影を映す
 天中の奥からは何万光年を翔けた魂が
 悲哀を奏でながら無限の光を震わせる

 私の涙を誘い甦るのは過去のざわめき
 「月夜を子供の頃のように飛べたならいいのに」
 「飛びたいなあ 飛びたいなあ きっと飛べるわ」
 私は心から祈りを奉げた
 気づけば月光に映って静かに天空を飛んでいた

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「血の海を渡り」

 夜明け前の聖堂で独り跪き

 これから犯すであろう罪を主に告解する

 誰に告げなくとも主だけは欺けないから

 もう我慢しない躊躇などしない

 すべてを明らかにするために

 裸で横たわる死体に牛刀を振り下ろす

 いったい何を愛したのかどこを愛したのか

 この顔なの? ゴミ袋に投げ込みました

 この右腕右手なの? ゴミ袋に投げ込みました

 この左腕左手なの? ゴミ袋に投げ込みました

 この右足? この左足? ゴミ袋に投げ込みました

 打ち捨てられた石のような胴体など愛しようも無い

 失望と絶望だけが残り

 飛び散った鮮血も拭かず腰を下ろしうな垂れた

 何処に捨ててしまったのか?

 確かに持っていたはずなのに

 気が遠のきながらも立ち上がり

 私は真っ赤な血の海を渡る

 いつもの始発電車が走り出す頃

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「姫弥呼」

 梅の花咲きたる苑に君誘えども
 心閉ざし身隠らひ吾は如何にせむ
 吾が嫌いになったのかい?
 もう機嫌を直しておくれ
 吾がどんなに待ち焦がれてるか
 君の瞳君の唇君の頬すべてが愛しい
 薄衣から覗く御足のたおやかさ
 桃色匂う君の御手を忘れられない
 やっとその季節(とき)が訪れたのに
 吾をこんなにも焦らさないでおくれ
 光の粒子薫る肢体を見せておくれ
 君を愛撫したいんだ
 もう気も狂わんばかりさ
 笑われたってかまわない
 その心を現わし微笑んでおくれ
 君のすべてを抱きしめたいんだ
 嗚呼 吾は死んでも構いはしない 

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「死の島」

断崖の上に立ち遠くに見る空と海の出会う地平線
足下の岩にゆったりと押し寄せ砕け散る波濤
重厚な瑠璃が一瞬にして真っ白い玉となり昇華する
湧き上がる飛沫の中へ身を投げたなら死ねるだろうか
留める者など誰もないいわんや泣いてくれる者など
冬の風だけが何かを告げるように吹きつける
死ぬことに何の意味があるか生きることも同じだろうが
此処は地平線から押し寄せる波と風に流される島
永遠に戻ることのできない生と死の閾に浮かぶ島
とっくに飛び降りたはずなのに気づけば
天に昇ることなくこの断崖にまた立ち尽くす

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「創造主よ!」

    天を仰ごうともその姿は見られない
    地に伏そうともその祈りは届かない
    創造主は自由気ままだから
    創造主には目も耳もありはしない
    人間の言葉など知る由もないでしょう
    人間を己が創った事などとうに忘れている
    命令もしなければ赦すこともない
    いわんや救うことなど決してありはしない
    賢者だ愚者だと言い争っても
    人間はその程度の存在なのです
    いずれは死に絶え消え去るのみ
    後にはきっと本当の平安が甦るでしょう
    光と風と静けさと・・・
    もしかしたら一輪の花は咲いているかも
    だけどわたしは信じます
    だけどわたしは祈ります

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「聖夜」

二人きりのクリスマス・イブ

静かな聖堂にキャンドルの炎が揺れて

小さな天使が廻る一つ二つ三つ

あなたの瞳に灯りが揺れて

わたしは悲しくて涙が溢れた

「離れたくない!」

「泣かないで・・・」

そっと指で涙を拭ってくれたあなた

十字架のイエスが二人を見下ろし

「一番辛く険しい道を行きなさい!」

あなたはわたしを強く抱きしめてくれた

けれど

わたしにははっきりと見えていたわ

二人が別々に死んで逝くことは

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「十字架」

 君を捕まえたのは私だ

 君を君たらしめたのは私だ

 どうか気づいて下さい

 そして

 あの十字架に私を架けたのは

 君なのだ

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「雪の華」

黒い空から雪の華が落ちて来る

アスファルトの上に

短かった夢の名残を惜しんで

その姿を消してゆく

わたしはひとつだけでも救ってあげようと

両手を掲げる

でも雪の華たちはそんなこと望まないかのように

手の平の上で昇華する

そのタナトスを受け入れるように

天上に還ってゆく

「幸せなの?」

雪の華たちが微笑んでくれた

「スヨン! いつでも還っておいでよ!」

「いつかはね きっと・・・ありがとう」

我に返ると雪はいつの間にか雨になっていた

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「アガペ」

真夜中にひとり家を出るただあなたに会いたくて 
凍りつく月に追われ気づけば山坂を裸足で駆けていた
息も煙る暗闇に鬼火が燃えて苔むした墓標が笑う
何処からか死臭が流れ来て鼻を突く
足の痛みより心の痛みに立ち止まり 
噛み締めた赤い唇に血が滲む 
どうして出逢ってしまったのかしら
どうして忘れられないのかしら 
あれ程憎んだ人なのにわたしが殺した人なのに
わたしは信じられる赦すことができる
わたしには夢があるから希望があるから
愛の素晴らしさ偉大さを感じているから知っているから
わたしを捨てていったい君は何処に行くのか?
勇気を出して面をあげてごらん
目を閉じて想像してごらん天の御国を
棺の蓋を開けた時一陣の風が吹いて
あなたを天空に連れ去った
見上げた漆黒の闇の底からダイヤモンド・ダストが降り注ぎ
一瞬天の御国の門をわたしに感じさせてくれた

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「歴史」

歴史は吹き溜まり、塵芥と悪臭とが淀んでいる。
人間が何かに追い立てられて、辿り着く行き止まり。
ここからは決して抜け出せない。
抜け出せたとしてもまた帰ってくるだろう。
「また戻ってきたのか、懲りないねぇ」
「あんたは誰なんだ!会ったことなどないよ。だいいち俺ははじめて来たんだから」
みんなそう思っている。
前世で散々辛い思いをしたのに、誰も覚えている者はいない。
「見たまえ!これが君だよ。覚えていなくても歴史にはちゃんと残っているんだ」
「知らないよ。俺じゃない!」
「まあ、いい、何れ分かることさ」
見た目は違っていても、必ず同じ事を繰り返す。
人間とは、歴史とはそういうものだから。
物質が消滅しても、人間の行為は消えることは無い。
歴史は永遠に繰り返される、永遠に。

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「いつかの海」

潮の香りがする
逆光の中に黒い松の枝が揺れていた
その向こうには
きっと真夏の東海が広がっているはず
いつかの海
その雄大さが憂いを忘れさせてくれた
裳(チマ)をかき揚げ靴を両手に持って
浅瀬を飛び跳ねながら両手を伸ばし
幼い少女の頃のように
くるくるとはしゃぎ廻る私
「オッマ! アッパ! オッパ!」
懐かしい家族の顔を思い浮かべて
「ポゴシプタ! ポゴシプタ!」
その瞬間だった
回り続ける視界の中を
敬礼をしながら微笑む軍服姿のオッパが
遠ざかって行く
私は泣きながら回り続けた
もうとっくに戦争は終わったというのに

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「虹の向こうに」

この世には、愛はほんのわずかで、エゴイストばかりです。
この哀れむべき人間たちを見捨てて、軽蔑していればいい。
ほんとうにそれでいいのでしょうか? 
倫理や正義、それに人間愛は何処へ行ってしまったのでしょう。
無知の半分は、思想を自由に交換することで退治できる。
残りの半分は哲理の応用で追い払える。
それでも残ったものは自省の光によって消すことができる。
ほんとうにそうでしょうか?
私の心になお残る強い不満はいったい何でしょう。
なぜ先達はおのれの外に救いを求め続けたのでしょう。
そうせざる終えなかったから?
きっと、虹の向こうに光が射したから。

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「春の海」

運命の出逢いと信じたけれど過ぎてしまえ一瞬の夢
いつかどこかで読んだ小説なのかも
「あなたは本当にいたの?」 
確かめたくてまだ痛む心を抱いてよくここに来たもの
いつもの海辺は冷たく夕ぐれの地平線は茜に燃えていた
波に足を濡らすとあなたが呼び戻してくれた
でも今のわたしには・・・あなたの声も思い出せない
波打ち際に見つけた貝殻ひとつ耳に当てたら
遠い波の音の向こうに優しいあなたの声がよみがえる
「ああ 確かにあなたはいた・・・今も側にいてくれるわね」
懐かしさと淋しさで心は凍りつき頭の中が真っ白になり
「雪だわ、真っ白い雪、雪が降っている、綺麗なこと」
両手で雪を受けとめようしたけれど冷たさは伝わらない
「ありがとう、あなたからの最初で最後のプレゼントね」
応えるように砂浜には寄せる優しい波の音が・・・
そして春の雪に消えてゆく男と女の影二つ

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「巡礼」

 母が眼を瞑り、その魂はもうこの世をあとにしただろう。
 この世のものをすべて置いて、一人娘の私さえ残して逝った。
 たった一言、「先に行ってるわ」
 私も直ぐ行きます。すべてを置いて、あなたとの思い出さえ捨てて。
 振り返れば、私を育んだ故里の山々が引き止める。
 「どうしても行くの? ほんとうに忘れられるの?」
 「いいえ、私は思い出そうとしているの永遠の故郷を」
 私の巡礼の旅は、主の導き母の願い私の誓い。
 行く手に見えるものなど、何もありはしないけれど、私は信じます。
 愛と希望さえあれば、きっと見つけ出せる。
 「さようなら、お母さん、さようなら、故里、さようなら、思い出」
 母はいつも言っていた、「苦しみは短く、喜びは永遠よ」
 私は繰り返す、「苦しみは短く、喜びは永遠ね。命は短く、母の愛は永遠ね」
 約束をもう一度強く抱き締めた。
 気がつけば、私は主に導かれるように歩み出していた。
 心には何の恐れも無く、ただ喜びが溢れて来る。

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「運命」

 女が男を呼び止めた
 そこには何のためらいも無い
 「わたしの恋人になって!」
 その運命を選んだとも知らず

 男は女に呼び止められた
 一瞬ためらい立ち止まる
 「わたしの恋人になって!」
 これが運命なのかとあきらめた
 
 男は振り返り女の肩を抱き寄せる
 どんな運命なのか明るい未来には思えない
 女は男をじっと見つめて涙ぐむ
 瞳には夢見る未来しか映っていない
 男は目を瞑り女を抱きしめた

 ある晴れた昼下がり花々の咲きほこる園で
 一発の銃声が青空に響き渡った
 そして
 女は目を閉じて花束を胸に一人横たわる
 男はこめかみに短銃を押し付けて言う

 「これが運命なんだ、いいのかい?」
 「ええ、運命ですもの」
 女は幸せそうに微笑んでいた

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「雁供養」

運命の出逢いと信じたけれど
過ぎてしまえ一瞬の夢
いつかどこかで読んだロマンの様な
あなたは本当にいたの?
確かめたくて痛む心を抱いて
わたしはこの浜辺に来たの

冬に近づく海は夕日が冷たく揺れ
寄せる波に足を濡らした時
あなたがわたしを引き戻してくれた
秋の旅人そんな感じだった
二人とも何も言わず何も聞かず
ただ恋をしたの悲しい恋を

早春の今はここも明るく暖かい
波の音にも優しい歌がある
波打ち際に見つけた木片を
時を忘れ一つ一つ拾い集めて歩く
いつの間にか日が落ちて
何処かで雁の啼き声する

あの日あなたは確かにいた
今はもうこの世の人で無いとしても
集めた木片を燃やしながら
わたしは祈りをささげた
知らぬ間に涙が頬をつたって
やがて傷ついた心が少しずつ
癒されてゆくようだった

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「マリアの奇跡」

ある日マリアに天使が舞い降りた
輝く白い微笑から放たれる光
その光がマリアの全身をつつみ
込み上げる喜びは譬えようもない
「あなたはいと高き方に選ばれた!」
お告げの御言葉にマリアは戸惑い
覆う光は煌めく白いベールに変っていた

天上からは真っ赤な花びらが降りそそぎ
地上にはウエディング・ベルが鳴り渡る
マリアを迎えにアモレス達も現れて
両手を引かれて飛び立つマリア
憧れのみんなの待つ天上の御国へ
一筋に光に向かって上りゆく
「ああ お母さんもきっと祝福してる」
   
マリアは喜びと平安に包まれて
いと高き神に誓いの言葉を奉げた
「あなたを信じます!」
その時いと高き神は応えて告げた
「そなたに奇跡を見せよう!」

マリアは見たのです
懐に生まれたばかりのイエスを抱いているのを
罪なく十字架に死んだイエスを抱いているのを 
全人類の世界の嘆きと悲しみを抱いているのを 

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「青い鳥」

お母様からいただいた青い鳥
とても大切に育てていたのに
その青い鳥が逃げてしまった
お母様の失望を思うと言い出せなくて
わたしは泣きながら家を飛び出したわ

あれからどれ程時は経ったことでしょう
わたしは世界を探し回ったけれど
青い鳥を見つけることはとうとう出来なかった
過ぎ去った時は絶望だけを残し
迷子のわたしには何も残さなかった

ああ お母様お赦しください
ああ わたし死んでしまいたい

世界の果てで闇の女王に出会い
お母様の死をそっと聞かされた
お母様は何の遺言も残してはくれなかった
わたしの心は粉々に打ち砕かれてしまった
その時でした
青い鳥がわたしのもとに帰って来ました
わたしは青い鳥に連れられて天上に昇りました

天国を歩むのはとても不思議だった
たくさんの人が明るい花園に見えるのに
お母様もお兄様も友達もみんないるのに
誰もが背を向けてわたしに気づかない
まるで太陽のようにわたしは独りぼっち
わたしは天上に昇ったけれど独りぼっち
あんなに苦しんで嫌った現世なのに
今はこんなにも愛しく恋しいわたし

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「青春の約束」

ある霜月の夜明け前 
遠く水鳥の鳴き声に目を覚ます
薄暗い靄の中から現われた一羽の浮き寝鳥
その見慣れた黒い瞳に涙が滲む
冬の湖面を裸足で渡る友の姿に
何故か私は声もかけられず
ただ黙って見送っていた

明くる年の息も凍る夜
遠く北の湖に小舟を浮かべてた
月冴えわたる天上から現われた大天使
その見覚えある黒い瞳に魅せられて
真冬の空へ漕ぎ出すわたしの胸に
どうしても思いだされるのは
友と結んだ一つの約束

「満月の夜 湖に小舟を浮かべて眠りたい」
青春の夢 二人の約束
忘れてないはずよ あなたも私も
だからあなたは伝説の湖に身を投げたのね
怨んだりしない悔やんだりしない
あの日の愛も約束も真実だもの

必ずあなたに逢いに行くわ
私が緑の水にキスしたら優しく迎えてね
あなたの胸でおもいっきり泣いてあげるから
「北の湖で満月の下ふたり抱き合い逝きたいの」
この世での二人の約束だから

その湖に友を訪ねて来た
必ずここに居る筈だから
枯れ木の陰に立つと
周りの雪景色はいっそう白く目も眩む
目を閉じれば瞼を通してあの頃が見えた

「ねえ 私達死ぬときは一緒よ 約束だから」
セーラー服姿の友が現れはにかみながら二人は向かい合う
「約束を守れなくて ごめんね!」
少しうつむき目線を湖面に向ける友
「いいのよ 私が約束を守って上げるから 謝らないで」
「この場所だけは変わらないわね」

私には分かること 親友だから
連絡したかったこと 相談したかったこと
苦しんだ思いも淋しかった気持ちも
決して誰にもどうしようもないことがある

「誰にも言わないでね 秘密だよ!」
「ええ わかってる あなた綺麗になったね」
「だって女学生の頃の私だもの」
「幸せなのね」
「一番幸せで輝いていた頃の自分になれるのここでは」
「今度は待つのよ 私を置いてきぼりにしたら承知しないから」
「分かってる約束するわ」

二人は目に浮かぶ涙も拭かず笑い合った
いつの間にか私もセーラー服姿の女学生
時間は私たちだけを残し流れ去ってしまった
さっきまで純白の雪の上に流れていた私の影も
今はもう見えない

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「教会址」

帰って来るのはいつもここしかない
ススキに覆われてしまった教会址
見下ろせば大人たちが畑仕事に精を出し
子供たちがはしゃぎ廻っている
谷川のせせらぎと吹きぬける風の音
今日もみんなを呼びながらここに来た

丘に立ちいつもの様に祈ると
光と影がざわめき揺らぎ
まわりの容子をあっと言う間に変えた
歩みのままに道が丘に伸び
白い教会が立ち現われる
鐘の音が響き渡りみんなの賛美歌の声

微笑みながら声を合わせると
死んだ母の声が耳に甦る  
「十字架は重いけれど担うやいなや十字架が私を担ってくれます」
「私の力は無いに等しくても 私の信じる主の力は偉大です 」
母の言葉を繰り返しながら祈った
「十字架は重いけれど・・・」

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「絶滅」

19世紀に神が死に20世紀に人間が死んだ
21世紀には地球が死ぬだろうか?
神あっての人間性であったはずなのに
神の属性であった自由権威尊厳そして崇高さまで
今では子供ですら自分の権利だと叫ぶ
頭脳は高度に進化し身体は美しくなったけれど
理性は退化し全てにおいて言葉だけが巧みになった
自動機械のように行動する偽装人間が出現し
モラルは永遠に失われ闘争の世界になるだろう
ついには誰も居なくなりやがて美しい地球だけが甦る

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「地球(テラ)よ」

 月周回衛星「かぐや」は、月の表面観測を目的に打ち上げられたけれど、そこで見たものは月の地平線から昇り来る青々と輝く地球の神々しさだった。
 私にはあばた面の月の真実よりも、想像力を刺激するあの青と白の宝石の方がありがたいことです。
 一瞬の閃きの中に、見えざる姿を感じた人は多いのではないでしょうか。私もその一人です。その時、こんな詩を心に綴りました。

 振り返れば涙が零れた
 ぬばたまの闇に浮かぶ
 一粒の涙
 あれは私の想い 愛の聖霊
 私は主のもとに上るけれど
 忘れはしない
 私の愛した美しい地球を

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「アンジェラスの鐘」

天上からの響きそれがアンジェラスの鐘
その響きが心に届いたのはいつのことか?
何故かとても懐かしい遠く深い記憶のような
もの心つく前から聴いていた玉響(たまゆら)
今はもう天に召された母がわたしに告げる
あなたはわたしのアンジェラスの響きでした
天使である主の御使い主のお告げそのもの
この世の泡沫人であるわたしの慰め

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「PARADISE]

人生の旅路はついに終わりを告げ た 
見上げた空に夢の虹が橋渡され
わたしは浮き船にのって運ばれる  
辿り着いたのは不思議な想像も出来ない場所  
噂に聞いたエデンの園だろうか?天国だろうか?  
近く感じるのにとても遠かったような  
知る者はきっと少ないのだろう   
地上で身に着けた物も担っていた重荷も  
遥か彼方の遠い昔にすべて置いて来た  
此処ではおのれさえ捨て去ることが「幸福」と呼ばれ  
生きるとは「主の栄光のための存在」と呼ばれている   
もはやこの地を離れることはないだろう  
完全に癒してくれるのだから  
此処まで光となって導いた聖なる者の跡が  
浮き船の航跡となって大空に煌めいている   
わたしは嬉しくて溢れ来る涙を抑えられない  
今や苦しく辛い時は過ぎ去って喜びと平安しかない  
ああ求めえて止まなかった愛が美しく咲きほる

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「アベ マリア」

茜色夕焼け空に影さして
黄昏姫が深紅のベールを翻し
別れの言葉を告げた時
その潤む瞳から一粒の涙が零れ落ち
星が生まれた
その光の中に独り跪き祈る女の影がある
あれはいったい誰でしょう?

あさぼらけ鴇色雲に影さして
東雲姫が紫紺の空に立ち出でし
見るがよい! その御姿を 
その煌めきにビーナスの光さえ
消え失せた
その光の中に独り跪き祈る女の影がある
あれはいったい誰でしょう?

それは、確かに聖母マリア様!

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「母親幻想」

わたしは、ママが嫌いでした、ずっと憎んで来ました。

誰かが肩越しにそっと囁いた。

君は母親を憎んで来たと言うけれど、それはきっと違うだろう。

「聖母」という幻想に憧れていて、その執着から逃れられなかったんだ。

それは教会に飾られた聖母マリアの肖像や聖書物語の所為に違いない。

しかし、現実は違っていただろう。現実の母親の愛は慈悲とは違うから。

生身の母親は君に愛だけを与えなかった、憎悪も投げつけたんだろう。

君は現実の母親を愛したいと思ったはずなんだ。

ほんとうはとっくに母親を許してた、ただ、聖母への執着が君を苦しめるんだ。

違います、違うんです、わたしは嫌々するように首をふる。

ママは聖母マリアよりも聖母でした。わたしの憧れ、理想でした。

だけど、わたしは気づいてしまったのです。

わたしが望んでいたのは皆と同じように現実の母親だったということを。

そして、わたしはママを嫌い、憎むようになって行ったのです。

わたしはママのようには生きられません、生きません!

誰かがわたしの側をそっと離れてゆきました。

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「思い出迷子」

思い出せば貧しい暮らしでした。

襤褸を着て、冬だというのに裸足で、両手はあかぎれて、

顔には薄化粧さえ無かったお母さん。

だけどわたしはあの頃とても幸せでした。

お母さんはきっと辛かったと思います。

わたしとの暮らしが一番幸せだったなんて、わたしは信じない、

それでもいいの、わたしは。

お母さんにはお母さんの一番幸せな時があったと・・・その方がありがたいの。

お母さん、ありがとう、ごめんね。

月日は夢のように過ぎてゆき、幸福は幻のように消えてしまう。

母は星に成り、わたしは土に還り、みんな居なくなった。

たくさんの思い出だけがきっと迷子になっているわね。

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「幻の教会」

こんなに愛してくれる人がわたしにはいるのに

あなたのキスを受けた自分がわからない

心のままに生きたとしても幸せとは限らない

わかってるのよ

約束もみんな捨ててあなたと逝けたなら

あの白い十字架の建つ幻の教会へ

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「時空」

過去は悔恨だけを残し流れゆき

現在は屈辱だけを連れてくる

わたしは未だに明日を知らない

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「積もる雪」

北国の故郷に暮らした子供の頃

雪の積もる冷たい冬になると

遠い都会暮らしに憧れたけれど

あなたとの想い出にはいつも

雪が舞う冷たく暗い街並ばかり

わたしの心に雪が積もっています

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「棄教」

目覚めた時部屋は真っ暗でした

一人暮らしのマンションのドアをそっと開け外に出る

冷たく重く苦しかった

無意識に通路を抜け外階段を下りる

じっとりとした感触に裸足だと気づき足元を見る

その深淵の底からたくさんの白い顔が見上げていた

悲哀に満ちた顔、顔、顔、そして憐れみの涙

何処かで何かが嘲笑う

天上を見上げると母が両手を差し伸べていた

私は、私は・・・

胸に掛けている十字架を引きちぎり母に返そうと差し出した

「ごめんなさい、お母さん」

もう、私には母は無い、神も無い、私自身も無い

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「自由の空へ」

過ぎ去った事柄を思い出しても罪ではない

心が慰められるなら幸いではないでしょうか

ただそれは一瞬のこと・・・囚われず潔く捨てなさい

朝に生まれ夕べには死すのがこの世の運命

私さえ水に浮かぶ泡沫に過ぎないのだから

いわんやどんな金言や箴言も真理にはなりえない

真の心とはもっと自由なものではないでしょうか

在りもしない故郷への未練が心を縛り

在りもしない痛みの恐怖が心に生ずる

だから勇気を出して自由の大空へ飛翔しよう

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「猜疑心」

きっと誰も賛同はしないでしょう

してくれないでしょう

わたしが信じられないもの

身近にいる人 その人の言葉

なによりわたし自身

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「戯言」

幸せな人生など何処にもありはしない

不幸な人生など何処にもありはしない

あるのはわたしの想いだけでした

あなたを信じた悔やむことの無い

このわたしの想いだけでした

幸せな人生など一瞬の夢

不幸な人生など刹那の言

すべてはわたしの想いだけ

すべてはわたしのお伽話

それもやがては消え失せた

わたしもあなたも

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「メタファー」

 肉体は三次元的存在

 「私」は言葉による隠喩の存在

 肉体は欲求する

 観念としての「私」は欲望する

 肉体はいずれ滅びるけれど

 「私」は無限無窮に広がり

 肉体は現実だけれど

 「私」は夢幻

 

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「誰かが見つめてる」

 眠られぬ夜に不安が私をつつむ

 誰かが私をじっと見つめてる

 私のことをすべて知っている誰か

 ああ 私はなんと罪深いのか

 ああ 私はなんと憶病なのか

 あれ程 信じますと約束したのに

 今さら何を言おうといい訳にもならない

 どんなに理屈でわかろうと行うは難し

 愛や正義の如何について知り 

 善と悪の対立ついても考えた

 人間の在り方も少しは理解した

 しかし私は未だに善い人間になれない

 おのれの力だけでは如何ともし難い

 悲しげな目が私を見つめてる

 その背後から蔑みの笑いが聞える

 ああ わたしは怯えている

 この眠られぬ夜に

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「醜いナルシス」

君は太陽に憧れた

世界を見下ろし世界を侮り

その熱火に焼け落ちた

君は王様に憧れた

誇りに育てられ誇りに欺かれ

そして断頭台に追い遣られた

ほんの少し勇気があったなら

ほんの少し信じるものがあったなら

ほんの少し知恵があったなら

そう 愛の偉大さを知っていたなら

こうは為らなかっただろう

学ぶべきものを間違えたんだよ

人は人間に生まれるんじゃない

人は人間に成るために学ぶんだよ

君は自分を卑下して見せるが

わたしにはその反対に見える

君は

未だに自己愛の幻想の中に閉じこもったままの

醜いナルキッソスだったのだ

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「約束の場所」

其処は誰もが最後に辿り着く場所 

思い出してごらん

あの優しさ あの温もりを

みんな待ってるんだよ約束だもの

独りぼっちなんかじゃないんだよ

目を閉じて大きく息を吸ってごらん

いつだって

あの約束の場所がみんなが見える

今立っている場所が何処だろうと

必ずそこに向かっていることを忘れない

さあいっしょに目を開けて歩き出そうよ

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「その御手に」

木の葉が落ちる 

空蝉の命を惜しむことなく

重たい地球が落ちて行く 

寂寞たる銀河の中を

われわれ人間も落ちようとしている 

武陵桃源の外へ

けれどもただ一人

この落下を限りない愛をもって

その両手に支えてくれる者があるのです

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「真夜中のコンビニ」

真夜中のコンビニは私のオアシス
都会という砂漠を今日も無事渡ることが出来た
日が落ちてからは生きた心地も無かったけれど
何とか此処に辿り着くことが出来た私
この一瞬だけは神に感謝しようかと目を閉じる

何の罪も無い善人でさえ殺される都会
オアシスといえども真夜中の時間帯は怖ろしい
いつ何時悪魔が忍び込んで来ても不思議はない
その時不気味な気配と嫌な臭いを嗅ぐ
その一瞬の躊躇が自分の命取りになってしまう

「さあ サバイバル・ナイフを握るんだ! 一気に刺し貫くんだ!」

コンビニが真っ赤な鮮血に染まっていく
もう直ぐ夜が明けるだろう明けたら出発だ
今日もこの灼熱の砂漠のような都会を渡り
オアシスに私は辿り着けるだろうか
不安で不安でたまらない心がまた震え始める

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「死相」

暗雲が世界を覆い光は色褪せる

旭日上らぬ朝は氷つき死に満ちる

人間は恐怖に慄き発狂するだろう

死の装束を身に付けよ!

死に身を任す準備せよ!

死を神聖な知恵とせよ!

然らば

死に引き立てながらも

より高い生へ昇れるのかもしれない

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「その時に」

 薄暗がりに身を隠し

 美徳の仮面をかぶり

 奴はやって来る

 神は死んだ!

 一切の価値の転換だ!

 などと叫ぶ者

 それこそ奴に違いない

 騙されてはならない

 いずれは仮面が剥げ落ちて

 奴の醜悪なその顔を見るだろう

 恐れるな!

 静かに健やかでまったき者でいなさい

 「時」の退化力を何者も逃れられはしない

 人にもその時がやがてやって来る

 生まれる時、学ぶ時、知る時、成就する時

 そして 死ぬ時である

 死に時を逃してはならない

 人生のすべてが水の泡となってしまうから

 愛と義に生きていれば必ずその時は来る

 命を惜しんでその時を失えば

 生きながらに地獄の苦しみを見るだろう

 人は二度この世に生まれると言う

 一度目は存在するために
 
 そして 無知と罪を知らず苦悩の果てに死ぬ

 二度目は善く生きるために

 そして 永遠の命を手に入れることになる

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「存在意義」

 生きる意味を考えたことがあったであろうか?

 わたしにはもはや時間は残されていない。

 最後の時が近づいた今耳をすませば、

 心に何かがきっと聞えるだろう。

 人間が生きることには常にどんな状況でも意味がある。

 この存在の意味は、苦しむことと死ぬことの意味でもある。

 失望するな! 惨めに苦しむな!

 誇りをもって苦しみ死ぬことに目覚めろ!

 涙流して泣いてもかまわない。

 その涙は苦しむ勇気をもっている証だから。 

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「真理」

 哲学や神学がならべたてる言葉の、

 あのみすぼらしさを観たまえ!

 人間らしく生きて来た者は騙されはしない。

 偉大なこの世の真実について、

 おのれの生活から得た経験的事実を疑うな!

 今はたとえ解釈の暗闇の中にあろうとも、

 永遠にして揺るぎない真理の星は、

 いずれ現実を謙虚に生きる者の頭上に、

 燦然と光輝いてくれるだろう。

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「あなたがいれば」

流す涙に賭けて握り締めたアリアドネの糸

今はまだ見えない幸福への道に長い闇があったとしても

この糸さえ握っていればと信じたの

もう戻らない時に流される枯葉のような心に吹く風に凍えてる

でも必ず二人は逢える

その時はもうあなたから離れないわ

強く抱きとめて放さないで側においてください

あの激しい胸のときめきを失くせないから

初めて出逢った日のように 

あなただけがいればいい

それだけでいいの

夢見てた世界が今は誰もいない乾いた街角

もう辿り着けないのかもしれないとあきらめかけた時

あなたがくれた糸に私は救われるのよ

あの彼方の小さな星もあなたが導いてくれるならきっと辿り着く

そうよ必ず二人は逢える

その時はもうあなたから迷わないわ

冷たく突き放して私の微笑を奪わないでください

あの激しい胸のときめき失くせないから

初めて出逢った日のように

あなただけがいればいい

それだけでいいの

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「絶望」

命が燃え尽きた時
開け放たれた心に闇が流れ込み
あれ程怯えていたのが嘘のように
その閾を越えてゆく
五感の鎖から解き放たれ
魂はいっきに飛翔し
光さえ飛び越えて
陶酔が意識も記憶も打ち砕く
一瞬閃いて消えたものは
約束した天国なの?
いつも仰いできた十字架が
闇の彼方に沈んでゆく

「待って! 待って! 待って!」
「嫌よ! 嫌よ! 嫌よ!」

あそこには私を待っている人がいるのに
必ず再会しようって約束したのに
あの人の胸で思いっきり泣きたいのに
ああ これが祈りつづけた平安なの?

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「忘れな草」

流れの岸の花影は

月夜にたたずむ幻か

波がすべてを連れてゆく

わたし一人残して連れてゆく

忘れな草に口づけて

流れの岸の花影は

一人残されたわたしです

君を想うわたしです

君のみ胸に今もありますか

流れに君眠る時 

わたしの心がありますか

忘れな草に口づけてさえ 

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「赤き闇の中」

赤い闇の中 

あなたの死体の隣に横たわるわたしは誰?

あんなにも愛したはずなのに・・・

あなたに抱きしめられた時に感じた隔が

わたしを狂わせる あなたを嫌悪する

そして あなたは死体となった

赤い闇の中 

わたしの死体の隣に横たわるあなたは誰? 

わたしの真っ白い腕や若々しい胸を

何度抱きしめようとどんなに愛撫しようと

あなたはわたしの性感も理性も

決して知ることは無いでしょう

赤い闇の中

男であるあなたが女であるわたしの

性愛を知ることは決して出来ない だから男は女をこれ程虐げるのでしょうか?

だから女は男に殺意をいだくのでしょうか?

だから二人は死体となって横たわる

赤い闇の中

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「赤い花」

夏の盛りの赤い花 

狂い咲く百日紅(さるすべり)の花

中庭のおぼろな赤き闇の中に

緑濃き黒髪を婆裟(ばさ)とさばく羅(うすもの)の母

透きとおる真白き熟れた乳房に

幼いわたしの性はつぼみの露おとし

その瞳に現われたのは女の邪恋か仏の小蓮華か

その赤き唇は心乱れて狂い咲く

夏の盛りの百日紅の花のように

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「恋の朱雀」

 戒めの十字架引き千切りあなたを追いかけた

 許されぬ恋と知りながら

 こんなにも狂おしくあなたを追い求めたわたし

 こうなるよりほかはなかったの

 わたしの心をあなたが奪ってしまったから

 でもあなたは何も悪くはないのよ

 わたしがはじめに好きになったのだから

 罰はみんなわたしに・・・わたしが負うこと

 きっと

 どんな天使も神様もわたしを止めることは出来ないわ

 いいのよ 

 たとえ煉獄に落とされようと絶対後悔なんてしない

 あなたに出逢ったことが私の運命とおもえるから

 この世での最初で最後の恋だとおもえるから

 命なんてほしくない・・・怖くない

 わたしの心が粉々に砕かれるようなことがあっても

 この想いはその破片から恋の朱雀となってまた燃え上がる

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「煉情」

供えられた花々は枯れ
生のかけらも残ってはいなかった
葬られた柩の中で
銀の十字架を握り締める手が朽ち初める

その肉が溶解しても
その華奢な指の骨が崩れても
まだでした
すべてが塵に還っても
燐光がすっかり燃え尽きても
まだでした
ついには忘却さえ過ぎ去ってしまった

その時です
魂が恋する者を求めて彷徨い出る
その無明の闇の中へ

もう千年も万年も経ったというのに
恋の苦しみが消えることはなかった

凍えそうな孤独が
底無しに沈むような絶望が
すべてをつつもうとも

彼方に建つだろう十字架に許しを請いながら
魂は恋する者を求めてさらに千年も万年も
無明の闇を彷徨いつづけるでしょう

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「機織姫伝説」

あなたの優しさ思いやり

とどいた胸に抱きとめて

つむいで想いの機を織る

その真白い乙女の恋衣

あなたの夢が叶うように

たとえ実らぬ恋だとしても

この世に生きた証として

想いはきっと届くように

心を込めて愛の機を織る

雨の日は今でも聞くという

身を投げし水の底から

恋し恋しとすすり泣き

機織姫の悲しい恋物語

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「涙の徴」

この世の別れの時

あなたの涙を私が拭い

私の涙をあなたが拭う

静かに見つめあう二人

あなたの瞳に私を映し

私の瞳にあなたを映す

そのまた瞳に互いを映し

そのまた瞳に互いを映す

二人の瞳の奥の奥の奥

いったい何処に続いているの?

それは魂の行き交う通路

そして涙はその徴

二つの魂が

無限に繋がりあえた徴

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「マリア観音」

秋の夕暮れ虫時雨

茜の空に木霊満ち

今夜も誰かが誘われる

カサ カサ カサ

裸足で枯葉を踏みながら

ゆら ゆら ゆら

気もそぞろに天見上げれば

三日月笑い星が降る

ぬばたまの闇に浮かぶは遠き丘

十字架が蒼白く燃えている

御前に跪く女がひとり呟いた

「ああ やっと逢うことが出来たのね」

あれは深い愁思のマリア観音

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「オルフェウスの微笑」

ポゴシッポソ、会いたくて
あなたを心のキャンバスに描いて
あなたに心の姫琴で話しかける

なんて美しい人なの
なんて恋しい人なの

あなたは確かに此処にいる
優しく微笑むあなた

いつか春のエーゲ海を二人で歌った
いつか夏の島々を二人で唄った
いつか秋の満月を二人で詠った
いつか冬のオリンポスを二人で詩った

すべてが大切な思い出
あなたは美 あなたは夢
私のすべて 私の命
恋のエロス 愛のイデア

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「初恋よ!さようなら」

 嫌々するわたし

 「行かないで!わたし 淋しい」

 言えたならどんなによかったでしょう

 そんな可愛い女だったなら・・・

 「待っててくれるね 必ず帰るから」

 女はひとりでは生きられないのよ

 「ごめんよ 手紙を書くから」

 破るために約束は交わせないのに

 悪いのはわたしと風が頬を打つ

 「あなたのこと忘れないわ」

 遠く小さくなるあなたの背中にそっと言う

 「もう振り向かないで お願い」

 月の光の中でひとり立ちつづけてた

 音もなく落ちた悲しい涙で

 あなたに許しを請うたわたしがいた

 「初恋よ!さようなら」

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「北極星」

生と死の閾に一点の光
「あれはポラリスか?」
一瞬煌めいて現われた
サテンのように白く光る翼をひろげた大天使が
私という意識をかすめ飛翔する
すべてを委ねてしまえば
魂を快い平安に誘い
辛かった現世を忘れさせてくれるだろうか
すべてを淡雪のように溶かし
安らぎの底に還してくれるだろうか
愛も孤独も執着も拒絶も
今となってはすべてが虚しい
オッパしか愛せなかった私
生きることに疲れてしまった私
瞳に映るポラリスが溶けるように
一粒の涙となって零れ落ちた

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「恋の葬送」

たった一つの灯りを立てて
この十字架に跪く
亡くした恋を弔えば
夜の聖堂に聞えて来るのは
この世に未練を残す霊魂の啜り泣き
ひとり死んでしまえば私には
二度と恋しい貴方に逢えないけれど
僅かに残る思いが語りだす
たとえ死んでも愛しています
たった一つの願いがあるとしたら
それは
いつの日かこの聖堂が
貴方を迎えることがあるようにと

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「聖霊」

聖なる御霊よ! 恵み豊かな御霊よ!

あなたを授けられ 胸に抱く者は誰か?

ああ 世俗に酔いしれたやからには

あなたの静けさが全く欠けている

あなたはいとも深くかくれ給いて

熱いまごころの者にのみ知られる

あなたはあの魂の故郷から訪れる

和やかな春の光のように

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「囁き」

わたしはお前を忘れることなど出来ない

はじめて出逢った時から運命は決まっていた

わたしはお前を離しはしない諦めない

お前を愛するからこんなに狂おしくわたしは囁く

「お前はわたしのものだ!こんなに愛してる!」

逃げられぬようにわたしはお前の魂を縛り上げた

もうお前はわたしのもとにある

わたしの狂おしく燃え上がった愛からは

どんな輩もお前を奪うことなど出来ない 

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「愛するとは」

あなたに出逢って一瞬に世界が変わったの

窓に差し込む陽射しがきらきら煌めき

ありふれた花が可愛らしくてつい微笑んでしまう

窓を開ければ甘い匂いに包まれて

きっとあなたも同じように感じていると思ってた

「わたしははじめて恋をしたのよ」

この時わたしはあなたを愛してると思ってた

「愛とはなんて美しく素晴らしいの」

この時わたしはほんとうにそう思ってた信じてた

遠い遠いむかしのことです

わたしはまだ本当の愛を知らなかった

愛がどれほどの決意と意志と忍耐の要ることか

愛を育てることがどれほど長い日々を必要とするか

何度も失恋をしてやっと知りました

現実のみすぼらしさと苦しさに幻滅した時

本当の愛の苦しみが始まります

恋は情熱ですけれど愛は違います

人を愛するとはどんな悲しみ苦しさにも絶望しない意志です

耐え忍ぶことを悦びにかえられるほどのことでした

罪を赦すことのできる人だけが手にすることのできること

きっとそれが「愛する」ことでしょう 

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「主の導き」

自惚れた仮面を粉々に打ち砕き 

地位も名誉も投げ捨てて

ついにおのれの城を後にする

何も持たず裸同然だった

あるのは信じた正義への思いだけ

主がお示しになった光射す道 

その先にあるという聖地を目指す

こんなにも狭く苦難に満ちた道だとは

方角を間違えてしまったのか?

思えばどうしてあなたに出逢ってしまったのか?

「お前が望んだから心の扉を開いたから」

「愛と勇気と希望を持って涙の谷を越えてゆけ!」 

「試練だけがお前を導く」

これは夢ではないのか?

花一輪も咲かない荒地の中を一人行く

薄暗がりの旅路ののちに真理を見出せるのか?

「約束しよう、お前が誰に何と言われようと信じるのなら」

「約束しよう、お前にイエスほどの勇気があるのなら」

「約束しよう、お前にあの十字架を背負う忍耐があるのなら」

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「あなたを待って」

「この悲しみはいつまで続くのですか?」

「この淋しさはいつまで続くのですか?」

「この胸の痛みはいつまで続くのですか?」

私は静かに眼を閉じて横たわり

時を刻む振り子のように数をかぞえ

あなたの影をずっと待つの

あなたのくちづけをじっと待つの

だけど・・・

あなたは足音さえ聞えない

「この悲しみはいつまで続くのですか?」

「この淋しさはいつまで続くのですか?」

「この胸の痛みを癒せるのはあなただけなのに」

私はそっと呟く

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「二十歳の決心」

さらば母なる山地よ、思い出の丘よ。

甘く切ない離れがたい乳房はもうなく、

はや秋が別れをうながしている。

長過ぎたかもしれない夏はとうに去り、

この地で生まれた稚魚たちも海に下った。

見渡せる高い峰々も白い雪におおわれ、

二十歳のわたしも旅立つ決心をしたのだ。

別れは辛いけれど、もう甘えは赦されない。

楽しい子供の遊戯の時は終わりをつげた。

母に負われた子供ではなく、大人として山を下る。

たったひとりで生きていかなければならないのだから。

しかし、わたしはその求めるものを見出した。

それが、わたしの向かう場所にほかならない。

主が導いてくださると言われた約束の地。

そこには永遠の命と平安があるという。

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「出逢い」

怨んだりしない 憎んだりしない

わたしの選んだことだから

疑ったりしない 後悔なんてしない

わたしの信じたことだから

悲しいことや辛いことは確かに起こるけれど

それは試練 試みなのよ 堪えられるはず

だって

あなたに出逢ったのもそんな時だったもの

わたしの涙を拭いてくれた人

「涙のわけがわかるかい?」

「淋しさのわけがわかるかい?」

わたしの体を優しく抱いてくれた人

愛を知ったあの一瞬を忘れられない

たとえあなたが私を忘れても

あなたの愛がわたしを放さないから

あなたに出逢ったことで

わたしの生はすべて報われたの

眼も眩みそうな体も燃え尽きそうな光に

真っ直ぐ面を向ける勇気がもてるの

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