わたしの十字架・・・⑥
窓外の積もり始めた雪を眺めながら、ユミはスヨンの言葉を思い出していた。古いつき合いだから声の響きから、何でも想像がつく二人の仲だった。
また、母親と何かあったのだろうとユミは感じていた。ユミには母親がいないので、単純にスヨンを羨ましくいつも思っていたけど、現実は好い事ばかりではないようだった。
ユミは母とよく話をする。顔も知らない母がよく夢に出てくることがあって、ユミを抱き上げて、話しかけてくれる。ユミの母はとても優しい。ユミもいろんな事を話す。
目が覚めると確かに母の残り香がするのだった。それはユリの花の香り。
ユミは生まれながらに足が不自由で、体も弱かった。何とか人並みに学校には通えたけれど運動はできない、いつも体育の時間は見学だった。
そんなユミを父親が心配したのだろう、神様に守ってもらえるようにと小学生の時、洗礼を受けさせた。ユミは母の姿を聖母マリアに重ねて、ずっと今日まで、お祈りをしてきた。
「 お母さん、ユミはお母さんがわかります。お母さんを忘れたりしません。
ユミを見守りください、すべての危機からお守りください。
お母さん、ユミが幼心を忘れないように、あなたのように、聖母マリアのように、
泉のように清らかで、澄みきった幼子の心を保たせてください。
悲哀に閉ざされてしまうことのない、単純素朴な心寛大で優しく思いやりに富み、
どんな善も見逃さず、どんな悪にもこだわらない、幼子の心を奪わないでください。
誠実に純真に何ももとめずひたすら愛し、他者の気持ちに快く溶け込んでいける、
優しく謙虚な心を保たせてください。
忘恩に対して閉ざされることなく、無関心に対して嫌気を起こさない開かれた、
不屈の心を勇気をお与えください。
他人のために、苦しみを甘んじ受ける心を、お母さん、ユミにお与えください。
そして、今日は親友のスヨンのことも祈ります。お母さん、スヨンを守ってください。
ユミの大切な友達ですから、お願いします。アーメン」
ユミがスヨンのために出来ることは、たぶん、祈ることだけだったろうし、きっと祈りが届くと信じてもいた。
これまでに、スヨンがユミにしてくれた親切や思いやりを思えば、もっともっと祈ってあげたいと思っていた。
・・・続く
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